QBハウスは「10分間カット」で知られるヘアカット専門店で、創業当初は税込1,000円という低価格でサービスを提供していました。
ですが、経済環境の変化や人件費の上昇などを背景に、過去数回にわたり料金の値上げ(価格改定)を実施しています。
以下では、料金改定が行われた主な年月とその詳細(改定前後の価格と改定幅、公式発表された理由、利用者の反応)を時系列でまとめます。
目次
2014年4月:消費増税に伴う初の値上げ(1,000円→1,080円)
2014年4月1日、QBハウスは創業以来初めてカット料金の値上げを実施し、税込価格を1,000円から1,080円に改定しました(+80円)。
この値上げは同年の消費税率引き上げ(5%→8%)に対応するためで、従来は税込1,000円に収まるよう 会社側が消費税分約50円を吸収 していましたが、増税を機にそれが困難となり税込1,000円維持は難しいと公式サイト上で説明しています。
内税から外税方式に切り替えざるを得なかったための改定ですが、「お釣りが要らない1,000円」という手軽さが損なわれることになり、利用者からは「増税分(30円)以上に上乗せされた50円は便乗値上げではないか」といった声も上がりました。
しかし、この改定自体は消費増税に伴うやむを得ない措置として受け入れられ、**「千円カット」**の象徴だった価格は1080円へと変更されました。
2019年2月:人材確保・待遇改善のための値上げ(1,080円→1,200円)
2019年2月1日、QBハウスは5年ぶりとなる2度目の料金改定を行い、税込価格を1,080円から1,200円に引き上げました(+120円)。
同時にシニア向け特別料金(平日65歳以上)も1,000円から1,100円に改定されています。
この値上げの理由について、運営元のキュービーネットHDは公式発表で「近年の労働市場環境の変化により店舗運営に必要な人材確保が急速に難しくなっている」ことを挙げ、離職した理美容師の再採用・育成や現スタッフの待遇改善に投資が必要であり、社内の効率化努力だけでは限界があるため価格改定に踏み切ると説明しました。
この改定により**「QBハウス=1000円カット」とは呼べなくなる**ため、利用者離れが起きるのではとの懸念も一部で指摘されました。
実際、居酒屋チェーン「鳥貴族」が値上げ後に客数減に苦しんだ事例になぞらえた議論もありましたが、QBハウスの場合は**値上げ後も客離れは少なく売上は増加**したと報じられています。
多くの利用者は多少の値上げについて「スタッフ確保やサービス維持のためならやむを得ない」と受け止め、従来の利便性や手頃さゆえに引き続き同店を利用したとみられます。
2023年4月:物価高・人件費上昇への対応(1,200円→1,350円)
2023年4月1日には、約4年ぶりとなる3度目の値上げが実施され、カット料金が税込1,200円から1,350円に改定されました(+150円)。
この値上げ幅は約12.5%と過去最大で、背景には世界的な物価高騰(インフレ)や人件費のさらなる上昇があります。
公式発表では、サービスの要である理美容師(スタイリスト)の**「働く環境の更なる向上」**すなわち待遇改善・人材育成への一層の投資が必要なためと説明されました。
実際、低価格理髪業界でも求人競争が激化し、人材不足が深刻化していたことから、従業員の処遇改善なくしてサービス維持は難しい状況でした。
値上げ後の価格1,350円はもはや創業時の1.35倍となり、一部利用者からは「以前より高くなった」との声も聞かれましたが、同時期に高齢者向け割引(シニア価格)の廃止や新たな割引制度の導入も行われており、多くの常連客は値上げ後も離れることなく利用を継続したようです。
経営側もこの改定によりスタッフ給与の引き上げを順次実施しましたが、従業員労組からは直営店と委託店で賃上げに差があることへの不満も表明されるなど、値上げの恩恵の行き渡り方が議論となる場面もありました(※労組記者会見より)。
総じて、この時期の値上げは**物価上昇下でサービス品質を維持するための対応**と受け止められ、利用者の大幅な減少には至っていません。
2025年2月:直近の値上げとヘビーユーザー向け施策(1,350円→1,400円)
直近では2025年2月1日付で料金改定が実施され、国内全店でカット料金が1,350円から1,400円(税込)に引き上げられました(+50円)。
今回の値上げは、近年続く原材料・光熱費など物価高を踏まえた対応であると同時に、サービス向上のための設備投資(デジタル化や店舗改装)や理美容師への継続的な人材投資を行う必要性から決断されたと発表されています。
運営企業は「お客様にご満足いただけるサービスの向上」を掲げており、値上げによって得た収益をスタッフ研修や店舗環境の改善に充てる方針です。
一方で、常連客の負担増を緩和する措置も同時に取られました。
これまで65歳以上限定だった「ツキイチ・キャンペーン」を2025年2月から全年齢に拡大し、前回利用から1ヶ月以内の来店で100円引きとするサービスを開始しています。
この割引拡大により、毎月利用するヘビーユーザーにとっては実質的に1回あたり1,300円で利用でき、値上げ前(1,350円)より安くなるためメリットが出る設計です。
今回の改定後、QBハウスの料金は創業時の1.4倍に達し、他の「1000円カット」競合店と比べても割高な水準となりました。
そのためメディアからは、今後は価格以外の付加価値(接客の効率化や技術力、店舗数の利便性など)が利用者の支持を左右するだろうとの指摘もあります。
もっとも、運営側は値上げとサービス改善の相乗効果で収益性向上を見込んでおり、店舗数も人材不足による縮小傾向から再び増加に転じる見通しと伝えられています。
実際の利用者の反応としては、「1400円になっても美容室よりは安い」「時間短縮と手軽さを考えれば妥当」といった肯定的な声がある一方、「千円カットと言えない価格」「他の格安店に流れるかも」といった意見もSNS上で見受けられ、さらなるサービス向上への期待が示されています(※日刊SPA記事より)。
まとめ:QBハウスの料金改定は、2014年4月(1,000円→1,080円)、2019年2月(1,080円→1,200円)、2023年4月(1,200円→1,350円)、2025年2月(1,350円→1,400円)といったタイミングで段階的に実施されてきました。
それぞれ消費税率の改定や人件費・物価上昇などの要因に対応したものであり、公式発表でもその都度明確な理由が示されています。
値上げ当初は「1000円カット」の看板が崩れることへの不安もありましたが、効率的なサービス提供と価格以上の価値を示すことで大きな顧客離れは招かず、むしろ安定した経営基盤づくりにつなげていることが確認できます。
現在の価格は創業時に比べ大きく上がったものの、それでも一般の美容室より割安である点や、短時間で済む利便性から、多くの利用者が引き続きQBハウスを支持しているようです。
今後も人件費や経営環境に応じた価格戦略が求められますが、その際には利用者の納得感を得られる説明とサービス改善が鍵になると考えられます。