QBハウスの年間店舗数推移(2001年~最新)

以下の表に、QBハウスの国内店舗数・海外店舗数・総店舗数の推移を年次でまとめます(各年末時点の概数)。

太字は主要な参考値です。

年度 国内店舗数 海外店舗数 総店舗数
2001年 91店舗 0店舗 91店舗
2002年 100店舗(国内100店達成) 1店舗(シンガポール初出店) 約101店舗
2003年 約160店舗 1店舗 約161店舗
2004年 約230店舗 3店舗 約233店舗
2005年 291店舗 5店舗 約296店舗
2006年 約300店舗 10店舗(香港進出) 約310店舗
2007年 約310店舗 15店舗 約325店舗
2008年 約290店舗 20店舗 約310店舗
2009年 291店舗 25店舗 約316店舗
2010年 約300店舗 30店舗 約330店舗
2011年 約340店舗 35店舗 約375店舗
2012年 約380店舗 40店舗(台湾進出) 約420店舗
2013年 約420店舗 50店舗 約470店舗
2014年 約460店舗 60店舗 約520店舗
2015年 約500店舗 80店舗 約580店舗
2016年 約530店舗 100店舗 約630店舗
2017年 542店舗 117店舗(米国進出) 659店舗
2018年 約550店舗 約120店舗 約670店舗
2019年 約567店舗 127店舗 694店舗
2020年 約560店舗 約130店舗 約690店舗
2021年 約550店舗 約120店舗 約670店舗
2022年 約555店舗 約125店舗 約680店舗
2023年 約560店舗 約128店舗 約688店舗
2024年 563店舗 128店舗 691店舗

※注:2001~2002年、2005年、2017年、2019年、2024年の数値は出典に基づく実績値です。

それ以外の年は公開資料から推定した概数です。

上表のとおり、QBハウスは創業当初から2000年代半ばにかけて急速に店舗網を拡大しました。

2001年に国内91店舗だったものが、2002年に100店舗を達成し、2005年には国内291店舗にまで増加しています。

当時「10分1000円カット」という斬新な業態は利用者の支持を集め、メディアにも取り上げられるなど、いわゆる“ブルーオーシャン戦略”の成功例として注目されました。

しかし急成長の一方で、現場の人材不足やオペレーションの混乱が生じ、2006年前後には成長の歪みが表面化します。

2006年には創業者が全株式をオリックス株式会社に売却して経営基盤の立て直しを図る事態となりました。

2005年時点で国内291店あった店舗数は、その後数年間は横ばいとなり、2009年時点でも291店舗(国内)と伸び悩みました。

この間に海外展開ではシンガポールでフランチャイズ出店した店舗が契約先の独断で屋号を変えて離反するトラブルも発生し、一時は現地拠点を全て失うという経験もありました。

その後、経営体制の刷新と現場重視の改革(人材育成の強化など)によって立て直しが進み、2010年代には再び店舗網拡大に舵が切られます。

2011年には国内店舗数が約340店、2014年頃には460店規模に増加しました。

2010年代前半には郊外型ショッピングセンターへの出店も進め、ファミリー層の利用も取り込んでいます。

また2012年には台湾、2017年には米国(ニューヨーク)へ進出し、海外店舗も拡大しました。

例えば2017年6月末時点ではシンガポール35店・香港57店・台湾24店・米国1店の計117店舗を海外で展開しています。

同時期の国内店舗数は542店で、総店舗数は659店に達しており、QBハウスは低価格ヘアカット業態で国内最大手となりました。

国内外エリア展開の広がり(時系列)

国内展開: QBハウスは1996年11月に東京都千代田区に1号店(神田美土代店)をオープン。

当初は都心の駅前・駅ナカを中心に出店し、通勤通学の途中で「短時間で身だしなみを整えられる」サービスが支持を集めました。

2000年代前半には関東・関西の主要都市圏へフランチャイズを含めて急速に多店舗展開し、2005年までに国内約300店舗を達成しています。

その後、一時成長が停滞したものの、2010年代に再び拡大路線に復帰し、東北・北海道から九州までエリアを広げました。

出店形態も駅構内だけでなく、大型商業施設(ショッピングモール)内や郊外ロードサイドの店舗も増えています。

例えば2010年代後半には地方主要都市のイオンモール内への出店が相次ぎ、地方在住者の利便性も高めています。

2024年時点でQBハウスは国内34都道府県に展開しており、特に首都圏・関西圏・中部圏の都市部では多数の店舗が営業しています。

一方で、2024年現在でも未出店の都道府県が12県存在します(2024年に新潟県へ初進出した時点での残り)。

具体的には東北地方の山形県・秋田県、中国地方の鳥取県・島根県、四国地方の高知県、九州南部の長崎県・鹿児島県など、人口規模が比較的小さい地域や交通の要衝から外れた地域では未出店となっています。

また沖縄県には近年進出し、現在4店舗ほど展開していますが、離島エリアなどはカバーしていません。

こうした「空白県」においてもQBハウスの潜在需要は存在すると考えられます。

例えば2024年に初出店した新潟市は以前から「ポテンシャルの高い都市」として注目していたエリアであり、魅力的な物件の獲得を機に満を持して出店した経緯があります。

新潟市のように人口集積がありながら未出店だった地域では、「ようやく近所にQBハウスができて嬉しい」といった声もあり、SNS上でも「自分の県にもQBハウスが欲しい」との投稿が散見されます。

今後、中期経営計画においても未出店県への出店検討が掲げられており、空白エリア攻略によってさらなる顧客基盤拡大が期待されます。

特に高齢化が進む地方では「手軽で安い身だしなみカット」のニーズが根強く、今後も好立地と人材確保の目処が立てば出店が進む可能性があります。

実際、2024年の新潟出店時には駅ビルと大型SC内の2店舗を連続オープンし、「ドミナント出店」で早期に知名度向上を図る戦略が取られました。

このように地方でも複数店を集中的に配置して効率よく周辺需要を取り込む戦略が取られています。

海外展開: QBハウスは創業6年後の2002年に早くも海外進出を開始し、同年4月にシンガポール現地法人を設立しました。

シンガポール1号店は日本人駐在者や現地のビジネスパーソンにも受け入れられ、安価で素早いサービスが評価されました。

しかし当初はフランチャイズ契約で展開したため、前述のとおり現地パートナーとのトラブルにより一時撤退を余儀なくされます。

この失敗を教訓に海外事業はすべて直営方式に切り替え、サービス品質とブランド統一を徹底する方針に転換しました。

その後2005年には香港に進出し、ショッピングモール内などに出店を拡大します。

2012年には台湾(台北)に進出し、2017年には欧米初となる米国・ニューヨークに出店しました。

2024年時点でQBハウスは海外ではシンガポール、香港、台湾、米国の4か国で計135店舗を展開しており、総店舗数の約2割が海外店舗となっています。

さらに2025年1月にはベトナム(ホーチミン市)にも1号店を出店し、第6の海外進出国となりました。

このように東アジア・東南アジアを中心に海外ネットワークも着実に広がっており、日本発のサービス業のグローバル展開例として評価されています(2018年には日本サービス大賞「JETRO理事長賞」を受賞)。

空白地域の潜在需要とユーザーの声

前述の未出店県については、人口規模や競合状況との関係で慎重な出店戦略がとられてきたと考えられます。

例えば四国の高知県や中国山陰の鳥取県・島根県などは、県人口が70~80万人台と比較的少なく、主要都市も限られるため、採算ラインを満たす店舗展開が難しい可能性があります。

一方、新潟県のように人口200万人超の県でも長らく未出店だったケースもあり、これはその地域固有の事情(適切な物件確保の遅れや、人員確保の課題など)が影響したと推測されます。

実際、新潟県へは2024年に初進出しましたが、県庁所在地である新潟市への出店には「かねてより高いポテンシャルを認識しつつ、満を持しての出店」とされています。

新潟市では駅ビル「CoCoLo新潟店」と郊外型SC「イオンモール新潟南店」の2店舗を連続出店し、地域でのブランド認知向上と利便性向上を図りました。

このように、未開拓地域でも需要が見込める都市には積極策で臨んでおり、他の未出店県についても今後類似の展開が考えられます。

利用者の声を見ても、「近所にQBハウスがなく不便」といった要望は各所で見られます。

特にQBハウス未出店県では、GoogleのクチコミやSNS上で「◯◯県にも進出してほしい」「○○市にもQBハウスをぜひ」といった書き込みが散見され、QBハウスの認知度自体は全国的に浸透している様子がうかがえます。

QBハウス公式も地域ごとの求人ページを公開しており、現在店舗がない県については「準備中」として美容師・理容師の採用募集を行っているケースもあります(例:高知県・福井県など)。

これは将来的な出店に備えた人材プールづくりとも考えられ、今後の店舗網拡大に向けた布石といえます。

また、既存店が少ない地域では、他の競合チェーン店に対してQBハウスを望む声もあります。

例えば九州南部では老舗チェーンのプラージュなどが利用されているものの、「シャンプーや顔剃りが不要な自分にはQBハウスのような簡便な店があればありがたい」という声もあるようです(インターネット上の口コミより)。

このようなユーザーの潜在ニーズは、QBハウスが未出店地域へ進出する際の後押しになるでしょう。

既存のQBハウス利用者からも、「出張先や旅行先でもQBハウスを利用する」「全国どこでも同じサービス品質なので安心」といった声があり、店舗網が広がること自体がブランド価値向上にもつながっています。

競合チェーンとの店舗網・シェア比較

低価格ヘアカット市場では、QBハウス以外にも複数のチェーンが存在します。

代表的なのは理容プラージュ美容プラージュを展開する阪南理美容株式会社の「プラージュ」ブランドで、全国に600~700店舗以上を有し業界最大手(年商日本一)と称されています。

プラージュは全国47都道府県で幅広く店舗を構え、その店舗数(理容・美容計)はQBハウスとほぼ同等かそれ以上ですが、カット以外のシャンプーや顔剃り等のサービスも含めた総合理美容店としての展開です。

一方、純粋にカット専門・低料金に特化したチェーンとしてはQBハウスが規模で群を抜いており、国内約700店舗という店舗網は同業態では最大です。

例えば競合の美容室イレブンカット(関東・関西中心)は約178店舗(直営108・FC70)、サンキューカット(3Qカット)は約260店舗、カットファクトリーは約170店舗といった規模で、QBハウスの店舗数はそれらのチェーンを大きく上回っています。

価格帯としてはプラージュがカット1,500円台~(予約不要)、イレブンカットも1,500円(税込)程度からで、QBハウス(現在通常1,400円税込)と近しい設定です。

サービス面では、プラージュは洗髪や顔剃りまで含め“早い・安い”理美容室として幅広い年齢層に支持され、郊外ロードサイドにも多く出店しています。

一方、QBハウスは駅ナカや商業施設内の“ついで利用”需要を押さえており、市場内での棲み分けが見られます。

シェアの比較という点では、正確な市場占有率データは公表されていませんが、店舗数と来店客数から推計するとQBハウスがカット専門店市場のトップシェアを持つと考えられます。

2018年度時点でQBハウス国内累計来店客数は2億人を突破し、2024年3月には3億人に到達しています。

低価格カット市場全体では、プラージュ(理美容併せた年間延べ客数がおそらくQBハウスと同規模)や地域密着の独立店舗も多く存在しますが、単一ブランドとしての集客力・店舗網規模でQBハウスは突出しています。

特に都市部の駅構内店舗では競合他社が入り込みにくく、鉄道会社との提携による有利な立地展開はQBハウスの強みです。

また、各店舗の待ち状況を示す「混雑シグナル」やスマホ順番受付など独自のオペレーション効率化も進んでおり、競合に対するサービス面での差別化も図られています。

直営店とフランチャイズ店の比率・出店戦略

直営 vs FC比率: QBハウスは創業当初、国内外でフランチャイズ契約を活用し急速な店舗網拡大を実現しました。

実際、2000年代前半の大量出店期にはフランチャイズ加盟による展開が成長を下支えしており、1997年にフランチャイズ1号店(水道橋店)もオープンしています。

しかし前述のようにシンガポールでの失敗以降、海外については全店舗を直営に切り替え、フランチャイズ方式は撤廃しました。

国内においても、直営店主体にシフトしています。

公式には直営・FC店舗数の内訳は明確に公表されていませんが、現在国内店舗の大半は直営運営とみられます。

フランチャイズ募集も現在は行っておらず、人材採用や社員育成によって自社で店舗展開する方針です。

もっとも、過去にフランチャイズ展開していた経緯から、いくつかの店舗は業務委託に近い形で運営されている可能性も指摘されています(※例えば商業施設側との提携店舗など)。

しかし「サービスの標準化」「ノウハウ流出防止」という観点から、QBハウスのチェーンオペレーションは直営主体へ移行したと考えてよいでしょう。

この路線転換により、各店舗のサービス品質や料金が全国一律に保たれ、ブランド力の維持につながっています。

出店計画・戦略: 現在、QBハウスを運営するキュービーネットホールディングスは中期経営計画「NEXUS」において積極的な出店目標を掲げています。2029年6月期までに国内外合計966店舗を達成する計画であり、2024年6月末時点(691店舗)から約40%の増加を見込んでいます。

国内では人手不足により一時新規出店を抑制していた状況から転じ、主要7大都市圏での出店再開や未出店県への展開検討が進められています。

具体的には、都市部ではターミナル駅・繁華街へのドミナント出店を再加速させるほか、地方ではショッピングセンター内テナント出店や異業種とのコラボ出店など、多角的に出店余地を探る方針です。

また海外では、現在128店舗の体制を今後5年間で250店舗に倍増させる計画が示されています。

とくに東南アジア地域での展開拡大(例:ベトナムでの複数店出店、中国本土市場への機会検討など)が視野に入っています。

2024年時点でも海外では年間10店舗以上のペースで新規出店が計画されており、直営方式で着実に店舗網を広げる戦略です。

直営出店を基本とする以上、人材の確保と育成も戦略の重要ポイントです。

QBハウスは「QBアカデミー」と呼ばれる研修施設や社内教育プログラムを整備し、未経験からスタイリストを育成する仕組みに力を入れています。

離職率低下に向けた待遇改善策(残業代1分単位支給や休日希望制度等)も打ち出し、美容師・理容師の確保に努めています。

これら現場目線の施策は、新規出店の土台となる「人」の充実に直結しており、結果的に店舗展開力の強化につながっています。

以上のように、QBハウスは国内外で700店舗規模のチェーン網を築きつつ、出店余地のある地域への進出やサービス品質維持、人材育成に注力しています。

今後も未出店地域の開拓や海外市場での拡大により、更なる店舗網の拡充が見込まれます。

低価格帯ヘアカット需要と「時間の価値」を重視する消費者ニーズに支えられ、QBハウスは業界トップランナーとして持続的成長を図っていくことでしょう。

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